協進の革

2024.04.30 UP

【革の基礎知識】染料仕上げと顔料仕上げの違いとは?

皆さんは「革」と聞いて何色のものをイメージしますか? 一般的には「茶色」や「黒」を想像する方がいると思いますが、それだけではありません。赤、青、黄色、白、ピンク、紫……と、無数の色の革が世の中には出回っています。それらの革は、どのようにして着色されているのでしょう。

今回は一般的に知られている2つの染め方について、それぞれの特性やメリット、デメリットを紹介していきます。

『染料仕上げ』と『顔料仕上げ』は何が違う??

革の着色方法として代表的なのは、『染料仕上げ』『顔料仕上げ』の2つです。

『染料仕上げ』は『アニリン染料』と呼ばれる透明性の高い合成染料を用いて革の繊維を染めていく方法。一方の『顔料仕上げ』は、文字通り『顔料』と呼ばれる着色料を革の表面にお化粧をするように塗っていく方法のことを指します。

協進エルの公式サイトに掲載されているものの中で、染料仕上げの革には、例えば『ディアキップ』や『オイルコードバン』などがあり、顔料仕上げのものはモンフリーニ社の『エリート』や『ドラリーノ』などがあります。

この2つの着色方法は、仕上がりやその後の変化に違いが生まれますが、どちらかが優れているというわけではありません。それぞれにメリットとデメリットがあるので、革の目的に合わせて選ぶことが大切です。ここからそれぞれのいい面と悪い面を見ていきましょう。

具体的なメリットとデメリットについて。

まずは『染料仕上げ』から。メリットとしては、染料自体が透明感のある薄い膜なので、しわや傷も含めて、革そのものが持つ自然な表情がよく見えると同時に、タッチ感がよく革本来の触り心地を感じことができる点が挙げられます。また使っていく中で色や風合い、艶などが変わっていく“経年変化”を楽しむことができ、いわゆる「革らしい革」が出来上がるのも大きなメリットと言えるでしょう。そしてどちらかと言うとカジュアルな製品に向いているのも染料仕上げの革の特徴です。

たつの市松原地区のタンナーによる『ディアキップ』は染料仕上げ。経年変化が楽しめます。

もちろんデメリットもあります。例えば水に弱いこと。耐水性が低いので、汗や雨などによってシミになってしまうこともあるので注意が必要です。また色がムラになりやすく、色落ちしやすい点や、傷やダメージを隠せない点も見逃せません。

これらの特性から、革らしい表情や、使い込むほどに味わい深さを増していくという革ならではの醍醐味を楽しみたい場合には、『染料仕上げ』のものを選んでください。

姫路市高木地区のタンナーによる『オイルコードバン』も染料仕上げ。「革のダイヤモンド」という異名を持ちます。

つづいて『顔料仕上げ』を見ていきましょう。塗膜が薄い『染料仕上げ』と違って、塗膜が厚いのが特徴なので、傷やしわなどを隠すことができるのがメリットのひとつです。また均一性が保たれるので、個体差が少なくなり、一様にきれいな表面に仕上がることや、色落ちしにくいことも良い点として挙げられます。

色の表現がしやすく発色がいいので、カジュアル向けの染料仕上げと違い、どちらかと言うとエレガントな製品に向いています。

モンフリーニ社の『エリート』は顔料仕上げ。イタリアらしい上品さが味わえます。

逆にデメリットとしては、まず表面に厚いお化粧をするわけなので、革本来の表情が失われるということ。また革の特徴のひとつである経年変化が見えづらいという点などが考えられます。

したがって「できるだけ新品の状態を長く楽しみたい」という意向があるのであれば、顔料仕上げを選ぶべきだと言えます。

同じくモンフリーニ社の『ドラリーノ』も顔料仕上げ。発色の良さが際立ちます。

さあいかがでしたか? 同じ「染める」という行為ではありつつも、そもそも手法が違うことで革の仕上がりも大きく変わるということが理解いただけたかと思います。

ただし大事なのは、最初に述べた通り、どちらかが優れているわけではなく、いかに目的に合わせたセレクトができるかということ。われわれ協進エルでは、革のプロが丁寧にアドバイス・提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

なお5月23日〜24日に行われる東京レザーフェアでは、国産の染料仕上げの革をピックアッププロダクトのひとつとして展示しますので、ぜひ会場で手にとってみてください。