協進の革

2023.08.30 UP

タンニン鞣しと、クロム鞣しの違いとは?

私たちが使っている革は、その鞣し方の違いで、大きくふたつに分けられます。ひとつは『タンニン鞣し』。そしてもうひとつが『クロム鞣し』です。よく聞かれるこのふたつには、どういった違いがあるのでしょうか。基本的な部分を、簡単に説明していきます。

それぞれの特性を見極めて、最適なものを選択すべき。

『タンニン鞣し』は、紀元前3,000年頃から行われていたと言われる人類最古の手法で、紀元前600年頃にはヨーロッパで一般化されていたとされています。樹皮や果実、葉といった植物性の資源を用いて鞣すので、製造工程においても製造後の処理においても、環境への負荷が少ない工法です。

一般的に言って扱いが難しく、熟練の職人による腕が必要なタンニン鞣し。それが故に、出来上がった革は、高級品として扱われることが多くなっています。その扱いの難しさの根幹にあるのが、実際に鞣してみないと仕上がりの良し悪しが分からないということ。一次鞣し〜二次鞣しと工程が分かれるクロム鞣しとの大きな違いでもあり、クロム鞣しの場合は、一次鞣しの段階で検品することができるので、リスクを小さくすることができます。

またタンニン鞣しの革は、ヌメ革らしい素上げの状態でないと売れにくいという問題があり、顔料や型押しなどの加工を施すことが好まれません。そういった難しさもあり、現在ではタンニン鞣し専門のタンナーはかなり少なくなっています。

協進エルにて扱っている『サドルレザー』。国産の最高級ヌメ革のひとつです。

姫路市御着地区のタンナー

SADDLE LEATHER / サドルレザー

生産国 : 日本
タンナー : 姫路市御着地区のタンナー
種類 : 牛バット
平均サイズ : 100ds

イタリア産の『アリゾナ』は、植物タンニンを用いて伝統的な「バケッタ製法」つくられます。

Conceria La Bretagna

ARIZONA / アリゾナ

生産国 : イタリア
タンナー : コンツェリア・ラ・ブレターニャ
種類 : 牛ショルダー
平均サイズ : 140ds

次に『クロム鞣し』ですが、発見されたのは1800年代。1960年以降には一般化されて、現在では市場に流通する革の8割近くがクロム鞣しと言われています。

発色の良さや、高い弾力性伸びの良さなどの特徴を持ち、タンニン鞣しの革と比べると圧倒的に扱いやすいのが、クロム鞣しの革。比較的リーズナブルに入手することができるものが多いのもメリットのひとつです。とはいえ『ボックスカーフ』のように高値で取引されるものもあるので、価格帯には大きな幅が見られます。

クロム鞣しならではの発色の良さに目が奪われる『シャトーブリアン』。

Tanneries Du Puy

CHATEAUBRIAND / シャトーブリアン

生産国 : フランス
タンナー : タナリー・デュ・プイ
種類 : 牛カーフ丸革
平均サイズ : 220ds

型押しが特徴的な『ドラリーノ』。イタリアらしい上品な仕上げになっています。

MONFRINI PELLAMI

DOLLARINO / ドラリーノ

生産国 : イタリア
タンナー : モンフリーニ・ペラーミ
種類 : 牛半裁
平均サイズ : 180ds

それぞれの特徴を表にまとめてみました。ただし鞣し方に加えて、他のさまざまな条件によっても、革の特性は変わるので、ここに記載されている特徴は、すべてのタンニン鞣し・クロム鞣しの革に100%当てはまるものではありません。

それぞれのメリット・デメリットを見極めるのことが大事。

つづいて2枚目です。

同じ革といっても、タンニン鞣しとクロム鞣しでは、そもそも性質が大きく違うことが分かりました。どちらかの方が品質として優れているかは言えません。つくるものに合わせて、適した方を選ぶのが正しいと考えられます。

気になる方は、ぜひ協進エルのスタッフにご相談ください。