協進の革

2025.02.12 UP

【研修会レポート】天然皮革に関する驚きの事実!?

先日、協進エルのスタッフが、皮革関連産業で働く人たちを対象に開催された『革製品の基礎知識』という研修会を受講しました。その中の『百貨店の品質管理と革素材表示の考え方』というカリキュラムの内容が非常に興味深いものだったので、2つの話題をピックアップして紹介します。

1:革製品のクレームについて

まずこのカリキュラムで知った驚きの事実があります。それは百貨店にある全商品の中で、革製品の売上はほんの一部であるにもかかわらず、購入者からのクレームは断トツで多いということ。つまり生地や合成繊維といった他の素材と比べて、革製品は圧倒的にクレームが入りやすいという、私たちからすると悲しい現実です。

クレームの内容としては「色落ち」に関するものがメインで、その中でも特に「黒」などの濃い色が多く、また部位としては革本体からもありますが、意外と「コバ部分」からの色落ちも多いとのこと。これはコバの仕上げ方の問題であり、革の問題ではないので、我々ではどうすることもできません。

手前の裁断面の部分を「コバ」といいます。

また乾燥している状態での色落ちを理由とした声が多いということにも驚きました。革と水の相性が悪いということは周知の事実。したがって革を扱う私たちとしては、塗れた状態での色落ちに関するクレームが多いと思い込み、これまで湿潤試験の結果により強い意識を向けていました。これからは考え方を変えていかなければなりません。

極端な話ですが、すべての革に対して『色止め加工』を強くすれば、色落ちのクレーム減らすことは可能です。しかし講師の方も「それだと革らしさが損なわれ、商品としての魅力も下がり、売れなくなってしまう」と、革を扱う側の気持ちも理解した上での説明がなされていてたのは嬉しい限り。色を止めない限り、今後も革製品に対するクレームがなくなることはないかもしれません。やはり消費者の皆さんに革という素材の特性を理解していただくことが大切であると改めて感じました。

これからも革製品を楽しむために、消費者の皆さんと共に学びを進めていかなければなりません。

2:天然皮革こそがベスト!?

「革」や「レザー」と呼べるのは、動物由来のものに限定するとJISによって規定されたのは、以前にこちらの記事で紹介した通り。この研修会でもその事実に触れられ、最近増えている“革の代替品”となる素材は、ポリウレタンを含んだものが多く、製品になった時に加水分解によるクレームが出はじめています。

また革の代替品でつくられた製品とのスペックの違いを検証したところ、以下の項目で天然皮革が圧倒的に優れているという結果が得られました(靴の材料品質の評価)

・耐屈曲性
・引裂き強度
・引張り強度
・耐摩耗性
・透湿性と吸湿性

もちろん代替品による製品にも良いところはあります。しかし靴や鞄、財布といった商品には、多くの指標において、天然皮革が最適な素材であると証明されたというのは、私たちにとっては嬉しい事実です。

「革」の素材については、昨年、JISで明確に定義されました。

これは余談ですが、かつて某世界的高級ブランドが「薄くした革を使って破れてしまうくらいだったら、合成皮革を使用した方がいい」と判断をしたことがありました。しかしヨーロッパは湿度が低いので、合成皮革でも10年以上の耐久性がありますが、湿度の高いアジア圏では、加水分解の進行が早く、クレームが続出したという問題も起きたそうです。

おわりに

いかがでしたか? 天然皮革をメインに扱う協進エルとしては、悲しい事実と嬉しい結果が入り混じって学べた研修会でした。

革の扱いは百貨店のスタッフの方にも難しいもの。私たちがプロとしてできる限りのサポートをしますので、不明な点などがあればお気軽にお問い合わせください。