最高級レザーの代名詞として知られ、長きにわたって数々の世界的ハイブランドの靴やバッグに好まれ続けてきた『ボックスカーフ』。
名前の由来や、定義までが諸説あり、また価格が高い理由が分かりにくいこの革について、深掘りしていきたいと思います。
名前の由来
「ボックス」という名称の由来は定かではありません。協進エルの従業員がかつて在籍した先輩社員から伝えられたのは、高級な革であるが故に、輸入される際に紙巻きではなく、頑丈な木箱に入れられていたことに起因しているという説です。
その他、日本にも“箱入り娘”という言葉があるように、柵の中で大切に飼育された(フィードロット方式)牛を使用していることに由来している説や、19世紀後半のヴィクトリア女王時代の王室御用達の靴店のひとつである『ジョセフ・ボックス(Joseph Box)』が好んで使用していた革だからという説などが見られるようです。
なぜ高級レザーとされているのか。
『ボックスカーフ』は、その定義も曖昧な部分が多いのですが、世界各国のタンナーからの話をまとめると「フランス原産のカーフ(仔牛)原皮を、クロム鞣しで、丸革のまま仕上げた革」であると言えそうです。
フランス産のカーフ原皮は非常に希少性があり、しかもそれを丸革で仕上げることができる設備をもつタンナーも少ないため、多く出回ることはなく、それが高値で取引される理由です。
革としての特徴。
フランス産のカーフ原皮は、フランス料理でよく見られる仔牛肉の料理に使われる牛の皮で、脂肪が少なく、きめ細かで柔らかい肉質が特徴です。革としてみた場合、見た目は他の革と大きく変わりませんが、内部構造の繊維が緻密で肉厚であり、柔らかすぎず硬すぎず、しなやかなコシ感が保ち続けられます。
したがって、例えば靴であれば、シューキーパーなどできちんと保管しておくことで、甲の部分もシワになりにくく、長くよい状態をキープできます。実際に協進エルの社員の多くが、会社で取り扱っているボックスカーフを使ったオーダメイドの靴を履いており、10年以上が経ってもピカピカの状態が保たれているものもあります。ぜひ東京レザーフェアの会場などでスタッフにお声がけください。
同様にバックにおいても、高級メゾンの商品は表材はもちろん裏材、芯材までもボックスカーフを使用しているものもあります。やはりそういった商品はへたれにくく、しなやかなアジが保たれ続け、長く愛用されています。
シュリンク加工をした時にも、特徴はよく現れます。ステアの場合、バット(お尻の部分)は粒が細かい一方で、お腹にかけて繊維が粗くなって極端に粒が大きくなってしまう面積が大きくなってしまいます。その部分は伸びてしまったり、へたれやすいので好んで使われません。
その点、ボックスカーフはステアの良いとこ取りのようなイメージで、細かい粒で比較的揃っていて、お腹の方の繊維の粗い部分の面積も小さいのでロスが少なくすみます。
長く使えて、ロスも少ないので、非常にサスティナブルな材料だということも言えるでしょう。
また一般的には『ベビーカーフ(生後6ヶ月以内の仔牛の革)』が高級だとされていて、確かに生まれてまもない牛の皮は、人間の赤ちゃんの肌と同じように、きめが細かく優しいタッチ感が魅力です。しかしデリケートすぎて傷がつきやすいと同時に、まだ小さい牛なので革として使える部分の厚みがとれず、用途が限られてしまうというデメリットもあります。
つまり見た目のきめ細やかさや、内部の繊維構造、厚みといった複数の観点から考えて、ボックスカーフは靴やバッグに用いる素材として、非常にバランスのとれた唯一無二の革であるということが言えるでしょう。
確かに「ボックスカーフ」を使って作られた商品は価格は高くなってしまいますが、10年〜20年と長く使えると考えれば、価格相応、いやそれ以上の価値があると考えられます。一度ボックスカーフの商品を使ってみたいと思っていただけたら嬉しいです。
おわりに
いかがでしたか? 世界的なハイブランドが好んで使う「ボックスカーフ」について、少し理解が進みましたでしょうか。弊社では、PRODUCTページで紹介している『DU PUY社』の3種類や、『ILCEA社』の3種類以外のボックスカーフや、別のタンナーによるボックスカーフなど、幅広い取り扱いがありますので、ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。