秋冬のファッションに欠かせない独特な質感を持つ「起毛革」。近年は1年中使用することも多いこの革は、意外に多くの種類があります。少し紹介していきましょう。
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起毛革の種類
起毛革の種類は大きく「表を擦るか」「裏を擦るか」のふたつに分けられ、表を擦ると『ヌバック』に、裏を擦ると『スエード』と『ベロア』になります。
ちなみに“擦る”とはサンドペーパー(やすり)をかけて表面を薄く研磨すること。我々の間では「バフィング」と呼ばれる作業を指します。
<ヌバック【Nubuck】(擦る面:表)>
革を染色した後に吟面を擦り、もう一度ドラムに戻して調色するのが『ヌバック』です。
国内産の『ガーメントヌバック』は、これまでありそうでなかった薄口超軽量の本ヌバックです。
アメリカ「ホーウィン社」の『アバランチ』。オイルをたっぷり含んだ重厚感のあるヌバックです。
非常に短い毛がたち、ベルベットのような極上の手触りが魅力のひとつ。また密度の高い吟面を残しているので強度が高く、丈夫です。
またヌバックの中でも『ダイレクトヌバック』と呼ばれる革があり、それは染色と加脂の後にバフィングを行い、ドラムでの再染色を行わないため、色落ちの問題などが見られて、本ヌバックより簡易版のようなものと考えていいでしょう。
<スエード【Suede】(擦る面:裏)>
シープやゴード、ピッグ、カーフといった比較的小さい動物の革の裏面を擦るのが『スエード』です。
イタリア「イルチェア社」の『アリカンテ』は、ボックスカーフならではの毛足の美しさが見所の最高級スエード。
イタリア「インカス社」の『ウォーター』。植物タンニン鞣しでつくられた繊細なベビーカーフのスエードです。
軽やかさと柔らかさが持ち味で、キメが細かく上品な印象を持ちます。
<ベロア【Velour】(擦る面:裏 / 床面)>
スエードと同じく裏面を起毛させますが、一般的には成牛の革を使ったものを指します。
イタリア「モンフリーニ社」の発色が良いベロアも、弊社にて数多く取り扱っております。
スエード革に比べて毛足が長く、少しワイルドな質感が特徴です。
※スエードとベロアの解釈には人によって異なることが多く、牛床革の吟面を擦ったものをスエード、裏面を擦ったものをベロアと呼ぶこともあります。
<吟付きベロア【Grain on Velour】(擦る面:裏)>
通常のベロアは厚い革を二層に分けた下の部分(いわゆる「床革」)を使うので、強度がやや落ちるという弱点があります。
「吟付き」とは革の表面をそのまま残しているということであり、吟付きベロアとはベロアと同じく成牛の裏面を削った革なのですが、吟を残したまま起毛させる少々マニアックな革。吟が付いていることにより、圧倒的に引き裂きに強くなり、コシも出ます。そして表面にはツルツルの上品な吟が残った革のまま、裏側の毛足は美しく整えられているので両面使いができるといったメリットも生まれます。
国内産の『吟付きベロア』は水を弾く3M加工済み。オイルが効いており、両面使いも可能です。
ちなみに繊維密度が緻密になるほど毛足が短くなるので、毛足の長さは「ヌバック < スエード < ベロア」となります。
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起毛革の製造工程
ここまで説明してきた「起毛革」は、一般的にクロム鞣しをして乾燥させた革をバフした後に、次の工程を踏みます。
1:ドラム染色
起毛革で大切なのは、革の表面だけでなく内部まで染料を浸透させること。また吟つきの場合は、スエード面に染料が多くついてしまうことが多いので、厳重なPH管理と時間をかける必要があります。さらに脂分を加えることにより、繊維がパサつくことを防ぎしっとりとした質感を目指します。
2:仕上げ
ドラムで染色をした後、最終的な色調整に顔料やバインダーを使ってしまうと毛足感が台無しになってしまいます。そこで染料に浸透剤を混ぜて吹付け、上品な毛足感を活かした仕上げや、感触剤などを吹付けて色に深みを持たせる場合もあります。
このように目に見える色調整だけでなく毛並みの立ち上がり方や柔らかさ、感触等も計算するのがタンナーの腕の見せどころとなります。
おわりに
いかがでしたか? さまざまな種類があり、実は奥の深い起毛革の世界。バッグや靴を手に取る時には、ぜひ毛足の質感の裏側を想像してみてください。素材の作り方や特徴を知ることで、革への理解が深まり、また愛着を持って革をお使いいただけると思います。
現在、協進エルの展示室にも、以下を含むさまざまな革が展示されております。ぜひお気軽にお立ち寄りください。
国産:『ガーメントヌバック』『吟付きベロア』
ホーウィン社:『アバランチ(オイルヌバック)』
イルチェア社:『アリカンテ(吟付きベロア)』