今年も9月23日から25日にかけてイタリアで開催された皮革見本市『リネアペッレ』に行ってきました。
そこで見たことや感じたことを簡単に振り返っていきます。
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『リネアペッレ』とは?
毎年2月と9月にイタリアミラノにある『Fiera Milano, Rho / ロー・フィエラミラノ』で開催される世界最大級の皮革見本市のこと。本革はもちろん合成皮革や繊維、金具などの付属品まで幅広く展示されます。
世界中のアパレルメーカーやデザイナー、バイヤーなどが一堂に会すこの展示会。皮革産業の最新トレンドや技術、素材などを発見する場として機能しており、協進エルのスタッフも毎回参加しております。
皮革・ファッションなどに従事する世界中の関係者が集います。
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『2026-2027 AW』の動向
今回の出展社数は、昨年9月と比べて90社ほど少ない1150社。消費の低迷による業界全体の厳しさが数にも反映されたように見え、全体的な展示に関しても“安定志向”がうかがえる内容だったと感じました。
今年のトレンドとして感じられたのは、引き続き毛付革をはじめ、ベロアやスエード、ヌバックといった“毛足もの”が多いということ。そして何より“革らしい風合い”を尊重する傾向が強まっているという印象を受けました。
また加工においても、これまでと変わらず、エナメルや箔、アドバンなどが目立っており、そこからさらなる加工を足したもの、例えばエナメルにヒートシュリンクやストーンウォッシュを施したものなども出展されていました。
左からエナメル加工、牛毛皮、箔の素材。トレンドとして数多く見られました。
展示会の後には、いつもの通りガレリアからモンテナポレオーネ通り、マンゾーニ通り、スピカ通りを回り、セレクトショップ『CORSO COMO 10』までのミラノの市場調査も実施。そこに点在するビッグブランドでも、ベロアやヌバックを使用したバッグが多く見られました。
ミラノにある巨大ショッピングアーケード『ガレリア』。毎日、多くの人で賑わいます。
もうひとつ印象的だったのは、タンニン鞣しの革を使い始めているブランドが増えたこと。持ち手など部分使いしていたり、ヌメ革の切れ目で見たこともないパンプスがショーウィンドウの良いところに飾られていたのには驚きました。またウエスタンブーツなどアメカジ風の展開が見られたのも、昨今のトレンドと言ってもいいかもしれません。
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協進エルの取引先の動向は?
ブレターニャ社:メインで展示されていたのは、防水加工やアニリン仕上げのオーソドックスな仕上げのもの。新作としてはクラッキング加工を施したもの、そして“変わりもの”としてはベロアが出展されていました。
内装も個性的で目を引くブレターニャ社のブース。
ベロア(上段)や防水加工(左下)、アニリン仕上げ(右下)など、幅広い素材が並びます。
「クラッキング加工」の革が新作として注目を集めていました。
イルチェア社:目を引いたのは、ソフトなナッパ系のボックスカーフや、吟付きのベロア、また使っていくとツヤが上がっていくワックス加工されたアニリン系のボックスカーフです。ベビーカーフも無数の種類が展示されていました。
シックな装いが印象的なイルチェアのブース。
ベビーカーフ(上)とベロア(下)
ホーウィン社:展示されている中で気になったのは馬革です。その中にはオイルをたっぷり加えて激しくプルアップするタイプなども見られました。
世界的ブランド『ホーウィン』のブース。多くの人が立ち寄っていました。
新作も充実の内容。しっかりとつくられた革が並びます。
マズーレ社:タンニン鞣しのショルダー系では、アニリン系の仕上げでモミ加工を施したもの、コンビ鞣しではソフトナッパ系やアニリンボックス系に仕上げたもの、さらに新作として進めてきたのがクセの強いバッファローの型押しでした。
持ち帰ったカットサンプルを撮影しました。こちらはショルダーを水モミ加工したもの。右側が接写です。
同じくソフトナッパのカットサンプル。
最後は新作のバッファロー系の型押し。個性が際立つ1枚です。
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おわりに
いかがでしたか? 少しでも現地の空気感や奮起が伝われば幸いです。なおここに掲載したもの以外にも、リネアペッレの様子や資料、市場調査のために撮影した写真などが数百枚にわたって保存しております。気になる方はお気軽にお声がけください。
世界の最新トレンドを吸収した後は、それらを協進エルのフィルターを通して皆さんにプレゼンテーションする『東京フェア』が控えています。ぜひ楽しみにしていてください。
第110回 東京レザーフェア
会期:2025年12月4日(木)〜 5日(金)
時間:4日 午前9:00〜午後5:00(受付終了16:30)
5日 午前9:00〜午後4:00(受付終了15:30)
会場:都立産業貿易センター 台東館
詳しくは東京レザーフェア公式サイトから
なお次回は「【現地レポート】リネアペッレ2026-2027 AW(番外編)」と称して、今回の続編をお送りいたします。そちらもお楽しみください。